「うちの子、読解力がない!」にどう対処するか。PISA調査から鍛え方まで詳しく解説!

読解力は、国語の成績はもちろん、他教科の理解や将来のキャリア形成、日常生活での意思疎通などにも大きな影響を及ぼします。

しかし、世間では読解力の低下が叫ばれ、「読書はするけれど、国語や他の教科の記述問題の成績を見るに読解力がないなぁ」と感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、PISA調査をもとにそもそも読解力は低下しているのかを確認し、読解力が低下する原因とその解決策、特に家庭で実践できる方法に焦点を当てていきます。

目次

読解力指標としてのPISA調査

世界的な読解力計測のテストとして、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)があります。

これは、「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」を測ることを目的とした、経済協力開発機構(Organisation for Economic Cooperation and Development)」の略称であるOECD事業の1つです。

PISAでは15歳児を対象に以下の3分野について、3年ごとに本調査を実施しています。

  • 数学的リテラシー:あらゆる会話の中から数学的に定式化し、物事に対して数学を活用して解釈する能力
  • 科学的リテラシー:科学的に考え、科学に関するさまざまな問題に関与する能力
  • 読解リテラシー :目標達成やあらゆる可能性を広げるために知識を積み重ねて、テキストを利用したり熟考したりして取り組むこと

PISA調査における読解力の定義

PISAでは、15歳の義務教育を終えた生徒が、目標達成のためにテキストを用いて内容を把握し考察する能力を読解力と定義しています。

この能力には、テキストの情報をただ理解するだけでなく、深く解釈し熟考すること、また自分の見解をテキストに基づいて表現することが含まれます。

さらに、内容理解に加えて、文章の構造や表現方法も評価対象です。読解力の評価は、文学的なテキストや説明文などの連続テキストだけでなく、図表やグラフを含む非連続テキストに対する多角的な分析能力も求められています。

PISA調査で計測する読解力の要素

PISAで評価される読解力には、教科書や参考書といった印刷テキストだけでなく、Webサイトや電子メールなどのデジタルテキストも対象に含まれます。

この読解力には以下の3つの主要な要素が必要です。

  • 情報探索能力
     テキスト内から必要な情報や該当する部分を見つけ出し選び出す能力
  • 理解能力
     単語やフレーズの意味を捉えるだけでなく、情報を融合して論理的な結論を導く能力
  • 評価・熟考能力
     テキストの質や信頼性を判断し、その内容や形式を深く考察し、矛盾点を特定して対応する能力

読解力は低下しているのか

さて、いよいよ本題です。
PISA調査を参考に、読解力が低下しているのかを確認しましょう。

2018年の調査結果で、日本は15位に位置づけられ、2015年の8位から顕著に順位を落とし、「読解力の低下」といわれました
この低下は、2015年の調査からコンピュータを使った形式(CBT)に変更されたことが影響しており、新しい形式に対する不慣れさが低下の一因とされています。

一方、2022年の読解力を見ると、OECD加盟国では世界2位、全加盟国でも3位となっており、世界トップレベルであることがわかります。
この要因として、以下のものが挙げられています。

  • 新型コロナウイルス感染症による休校期間が他の国々に比べて短かったこと。
  • 学校での授業が、現行の学習指導要領に基づいて改善されたこと。
  • 学校での情報通信技術(ICT)の設備が整い、生徒たちがICT機器の使用に馴染むようになったこと。

参考:OECD生徒の学習到達度調査 PISA2022のポイント

また、長期的な点数の傾向を見ても、OECD全体の平均点は下降傾向にあるにもかかわらず、日本は下降傾向は見られず、平坦に推移していることも特徴です。

これらの結果を見ると、日本の子どもたちの読解力は世界に誇れるものであると言えるでしょう。

では、本当に読解力には何も不安がないのでしょうか?

中高生の半数以上が文章を理解できていない?

『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著)という本をご存じでしょうか?
AIが台頭する社会で必要となる力や、日本の子どもたちの課題について述べている本です。

この本では、読解力について以下のような結論を述べています。

結論を先に申し上げますと、日本の中高校生の読解力は危機的と言ってよい状況にあります。(中略)中高校生の読解力が危機的な状況にあるということは、多くの日本人の読解力もまた危機的な状況にあるということだと言っても過言ではないと思われます。

P172-173

この結論には、どのような根拠があるのでしょうか?
本書で挙げられている例題を紹介します。

次の文を読みなさい。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がってる。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは(  )である。

①ヒンドゥー教 ②キリスト教 ③イスラム教 ④仏教

解答

②キリスト教

簡単な問題だと感じた方が多いと思います。
実は、この問題の正答率は、中学生62%、高校生72%です。

つまり、中高生の3~4割がこの文章を理解できていないのです

もう一問見てみましょう。

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性のAlexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(  )である。

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

解答

①Alex

こちらの正答率は、中学生38%、高校生65%です。
ちなみに中学一年生の正答率は23%だったそうです。

PISAでの順位をお見せしましたが、この実態を知ったとき、「読解力は十分」と胸を張って言えますか?

読解力が低下する原因

読解力が低下する背景には、いくつかの要因が絡み合っています。

デジタルデバイスの使いすぎ

デジタルデバイスの普及によるスクリーンタイムの増加が挙げられます。

スマートフォンやタブレット、コンピュータの画面を見る時間が増えることで、紙の本を読む機会が減少しています。

これにより、深い読み込みを要する読書の機会が失われ、読解力の基礎が鍛えられにくくなっています

学校教育における読解教育の課題

詰め込み式の学習やテスト対策に重きを置いた教育は、文章を深く理解し、批判的に考える力を育てる機会を限定してしまいます。

本来時間をかけて丁寧に学ぶべき知識を、「とりあえず点を取れるようにする」ことを目標に、「やり方だけを暗記させる」ということが行われることもあります。

また、こういった教育により、子ども自身が「暗記的な方法」に頼りがちになってしまいます。

家庭での読解力への意識

親が読書をしない、または忙しさを背景に子どもとの読書時間を確保できない家庭では、子ども自身の読書への関心が薄れがちです。

実際、過程での子どもとの係わりで、「子どもと話をするときはできるだけ正しい言葉遣いをこころがけている」など、教育意識が高い家庭ほど読解力が高いという調査結果もあります。
参考:「家庭の教育力」と子どもの「読解力」との関係

家庭内での言語への意識は子どもの読解力向上に非常に有効であり、この機会の欠如は読解力の低下につながる可能性があります。

読解力向上のための具体的な方法

家庭での読書環境の整備

読書のための時間を家庭内で確保することは、読解力向上の第一歩です。

特定の時間帯を読書時間と定め、日常的なルーティンに組み込むことが大切です。
また、子どもが集中して読書できる静かなスペースを提供することも重要です。

加えて、子どもの興味や好奇心を刺激する書籍の選定が重要です。

読書のあとには、読んだ内容について親子で話し合うことで、理解を深め、批判的思考能力を養うことにつながります。

読書をしているが読解力が伸び悩む子どもへの対応

読書量だけでなく、質も重要です。
多様なジャンルに触れさせ、異なる視点から物事を考える機会を提供することが大切です。
また、読書以外にも、映像資料を活用した学習や、グループでのディスカッションを通じて、読解力の向上を図ります。

また具体的な話にはなってしまいますが、成績向上のためには、設問で問われていることを明確化して、回答していくことを意識する必要があります。

  • 「○○について、説明せよ」という設問に対して、「○○であるから、××である」
  • 「~はなぜか?」という設問に対して、「~なこと。」
  • 「~はどんなことですか?」という設問に対して、「~だから。」

上記のような回答をするお子様がとても多いなと家庭教師をやって最近よく感じております。

保護者の方も、読書だけでなく、設問に対する適正なアプローチができているか、お子様の解答用紙をチェックしてみましょう

日常生活での読解力を高める活動

日常生活の中で、ニュースや記事を一緒に読み、その内容について話し合うことは、子どもの読解力を自然に高める方法です。

また、映画やドラマのストーリーを題材に、登場人物の行動や動機について考察することも有効です。

さらに、日記やブログの執筆を通じて、自分の考えをまとめる練習をすることが、読解力だけでなく表現力の向上にもつながります。

まとめ

中学生の読解力向上は、単に学校教育に任せるのではなく、家庭での取り組みが非常に重要です。

親が積極的に関わり、サポートすることで、子どもの読解力は確実に向上します。

読解力は一朝一夕に身につくものではありませんが、日々の小さな努力が大きな成果につながることを忘れずに、親子で一緒に成長していきましょう。

Cograsでは、お子様の「学び方」の習得をサポートしています。
ぜひCograsの学習管理サポートの受講も検討してみてください。
質問も受け付けております!

投稿者プロフィール

Cogras
Cogras
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次